日本には、古くから「行事食」というものが存在します。

「行事食」は、お正月や節分、春の節句など行事ごとに食される食べ物やメニューのことを指し、家族の健康や幸せを願う目的で、長らく伝わってきました。

さて、お正月の行事食といえば、おせち料理やぜんざい、節分の行事食は福豆や恵方巻ですね。3月の大きな行事はひな祭り。ひな祭りで食べるものは「ちらし寿司」がすぐに思い浮かぶ方も多いかと思いますが、実は、ひな祭りの行事食はちらし寿司だけではありません。

今回の記事では、そんなひな祭りの行事食と食材に注目。昔の人の知恵や、家族を思った温かいエピソードも交えご紹介します。

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ひな祭りに食べる食材

行事食に使用する食材は、その季節の旬の食材や、縁起をかついだ食材が使われます。

ひな祭りの季節は春。ひな祭りに食べられる食材は春が旬の野菜や魚介類がたくさんあります。

はまぐり

はまぐりが一番おいしい時期は、4月~5月の産卵期を迎える直前。つまり、3月上旬となります。旬のはまぐりには栄養素がたっぷりで旨みもたっぷりなため、ひな祭りの食材には欠かせません。

そんなはまぐりが日本人に親しまれてきた歴史は古く、平安時代からと言われています。当時上流階級の女性の間で「貝覆い」という遊びが流行っていました。「貝覆い」ははまぐりに模様をつけ、片割れを探すという神経衰弱のような遊びです。

なぜ片割れを探す「貝覆い」が可能だったかというと、はまぐりは二枚が対になっている貝殻でないと、ぴったりと合うことはないからです。

「二枚が対になっている貝殻でないと、ぴったりと合うことはない」ということから、はまぐりには次第に「仲の良い夫婦でいられますように、一生一人の人とつれそえますように」という願いが込められるようになりました。

また、はまぐりにはアミノ酸のタウリンや鉄分がたっぷり含まれているため、疲労回復に大変効果的なのもうれしいポイントです。さらにビタミンB12も豊富なため、大変肌に良い食材です。

栄養面からみても、女性に嬉しい栄養がたくさん詰まっていることがわかります。

さざえ

次にさざえです。さざえの旬は5月~と、まだ旬真っ只中とは言えません。ですがさざえは漢字で「三三栄」と書かれ、「3月3日に栄える」という意味をもつようになりました。

本来の漢字は「栄螺」と書きますが、縁起を担いで置き換えられるようになりました。

このいわれが始まったのは、江戸時代からといわれています。

えび

えびは、お正月などのお祝い行事によく食される、縁起物の食材として有名ですよね。えびは「長寿」「出世」「魔除け」といった複数の縁起の良い意味がかけられています。

  • 長寿:えびのように「腰が曲がっても長生きできますように」という意味。
  • 出世:えびは脱皮を繰り返して成長する甲殻類のため、脱皮と出世をかけ、「出世できますように」という意味が込められるようになりました。
  • 魔除け:古くから赤色には「魔除け」の意味が込められていました。えびは真っ赤な体の色をしていることから、魔除けの意味もあるとされてきました。

レンコン

レンコンには穴があいていることから、「将来の見通しがよい」とされ、古くから縁起物として扱われてきました。

穴があると、何かが抜けていたり何か大切なものが穴から出て行ってしまうのではないか、といったマイナスなイメージが浮かびますよね。ですがそのような消極的なイメージはまったくなく、昔の人はとてもポジティブな機転が利いていますね。

豆には、今年1年健康で暮らせますように、といった意味や、我が子がまめに働きまめに生きる子になりますように、といった意味がこめられています。

このように、縁起の良い豆はひな祭りのようなお祝い事には欠かせない食材となりました。

よもぎ

よもぎをひな祭りに食べる習慣には、3つの意味合いがあります。

  1. 健やかな成長を願う意味が込められています。栄養面からみても、増血作用があるため、よもぎはとても健康に良い食べ物だとわかります。
  2. よもぎはよい香りがするため、邪気を払う力があるとされてきました。
  3. よもぎの鮮やかな緑は、長寿や健康の意味や植物(草)が萌える大地を意味しています。

これら3つの意味合いをもつよもぎは、縁起の良い春の食材としてひな祭りに食す習慣ができました。

ひな祭りの食材を使った食事メニュー例

ひな祭りに食べるものをふんだんに使ったメニュー、そしてそれぞれのメニューにこめられた思いや時代背景もあわせご紹介します。

ハマグリのお吸い物

ハマグリはとても栄養価が高く、汁に溶け込んだ栄養も摂取できるというところから、ハマグリのお吸い物を食すようになりました。

ハマグリのお吸い物を作るときは、昆布だしを使いましょう。

昆布に含まれる栄養素とハマグリの栄養素の相乗効果で、よりいっそうの美肌効果を期待できますし、貧血予防に効果的です。

ちらし寿司

ひな祭りといえば、ちらし寿司を思い浮かべる方も多いと思います。

ちらし寿司には、縁起物のえびやれんこん、豆がつかわれ、さらに錦糸卵やいんげんなど色鮮やかで豪華なお寿司ですよね。ちらし寿司の起源をたどると、平安時代にまでさかのぼります。

ちらし寿司の起源は、平安時代の「なれ寿司」といわれていますが、「なれ寿司」はえびと菜の花だけを使った寿司で、かなり見た目が地味でした。そこで、女の子を祝うひな祭りにふさわしい寿司にするため、可愛らしい色合いにこだわった寿司が作られるようになったのです。

そして江戸時代になると、なれ寿司に含まれる食材がさらに増えます。その発端となったのは、備前大洪水でした。備前大洪水が起きたとき、藩主は「一汁一菜令」を発動。これは、汁物1品と副菜1品以外は禁止するという命令でした。

このとき、なんとか食材を多くとりたいと考えた庶民は、ご飯に魚や野菜を混ぜ込むようになりました。それが「ばら寿司」と呼ばれ、複数の食材が寿司にばらして混ざっている寿司の始まりです。

かしこい昔の人の知恵が垣間見れますね。その後に、ばら寿司は「ちらし寿司」と呼ばれるようになりました。

ちらし寿司の豆知識

実はちらし寿司、海鮮が盛られた「海鮮ちらし」ときのこ類や野菜をふんだんに使った「五目ちらし」の2種類存在します。海の幸、山の幸がそれぞれにちらされ、味も見た目も華やかな寿司なのです。

さらに五目ちらしは、生ものを使用していないため2~3日日持ちします。多く作っても安心ですね。

菱餅、ひなあられ

菱餅とひなあられは、ひな祭りには定番の食べ物ですね。

実はこの2つの食べ物には、密接な関係があったのです。

まず菱餅の色ですが、赤色はくちなしを使い作られています。くちなしには、解毒作用があり、また赤い色をもつことから、古くから魔除けの食べ物として食されてきました。

緑色はよもぎで作られた餅です。よもぎの緑色は、厄除けや長寿、健やかな成長を願う意味が込められています。

最後に白色の餅は、ひしの実で作られています。ひしの実には子孫繁栄、長寿の願いが込められ、さらにその真っ白な色から純潔といった意味も込められています。栄養面からみても、血圧を下げる効果があります。

次に、3色の餅を重ねる順番です。

下から、緑色・白色・赤色を重ねた場合は、「雪の下に新芽が芽吹き、その上に桃の花が咲いている情景」をイメージして重ねられています。また、下から白色・緑色・赤色を重ねる場合、「雪の中から新芽が芽吹き、桃の花が咲いている情景」をあらわしているようです。

菱餅は、美しい色合いをもつだけではなく、春らしく、そして前向きなメッセージも込められているのです。そして、菱餅と同じく色鮮やかなかわいらしいひなあられ。

ひなあられは元々、菱餅を外で食べるため、細かく砕いて作られたといわれています。

その昔、「ひなの国見せ」といい、雛人形を外に持ち出し、外の景色を見せてあげる遊びが女の子の間で流行になりました。その時に、菱餅を外でも食べられる形にしたのが、ひなあられ、と言われています。

ひな祭りに食べる食材を使ったその他メニュー

伝統的なメニューや和食にとどまらず、ひな祭りに食べられる食材で洋風料理にもチャレンジしてみましょう。毎年違ったひな祭りを楽しめること間違いなしです。

ハマグリのクラムチャウダー

牛乳を使用しているので、カルシウムもとれる、一石二鳥なメニューです。

ハマグリと生姜のスープ

3月初旬といっても、まだ肌寒い地域もあるかと思います。そんなときは体を温めてくれる生姜と一緒にスープでいただきましょう。

よもぎパン/よもぎパウンドケーキ

パンやケーキを作る際に、みじん切りにしたよもぎを混ぜ込んで作っています。

朝食はパン派という方や、お子様のおやつ、ダイエット中のおやつなどにも活躍しそうなレシピですね。

また、パウンドケーキはホットケーキミックスでも作ることが可能なため、お菓子作り初心者の方や、あまり時間をかけないでお菓子を作りたい、という方にもおすすめです。

ひなあられチョコ

ひな祭り終了後、ひなあられがあまっても大丈夫。ひなあられを、溶かしたチョコレートにまぜ冷蔵庫で固めると、また違ったお菓子のできあがりです。

一口サイズに固めれば、小さいお子様でも手軽に食べることができますね。

ひなあられチョコを作る場合、関西風のひなあられをおすすめします。関西風のものであれば、醤油風味や塩風味のひなあられなので、甘いチョコレートとても相性がよいのです。しょっぱさと甘さがマッチして、手が止まらなくなりそうなお菓子ですね。

ひな祭りに食べるもの/まとめ

以上、ひな祭りに食べるものや食事メニュー例のまとめでした。

毎年何気なく目にする菱餅やちらし寿司ですが、それらの食べ物には、女の子の誕生を祝い、わが子の健やかな成長を願う親の思いやりがたくさん詰まった食事だったのですね。

今年のひな祭りは、ぜひ親御さんと一緒にお料理を楽しんでみましょう。